日本一恥ずかしい温泉

2015年に仲の良い台湾人の友人が仕事の都合で熊本に引越した為、私も熊本へ遊びに行くことにした。熊本の観光地と言えば、阿蘇山・湧水・熊本城などではないだろうか。しかし私の1番の旅の目的は日本一恥ずかしい温泉、万願寺温泉だ。

満願寺温泉を知るキッカケはテレビ番組での紹介だ。住宅地を流れる川が温泉になっており、温泉に入っている人の横で地元の方々が野菜を洗うという映像が流れていた。私はお風呂に入っている横で野菜を洗われたことが無いので是非とも野菜を洗って頂きたいと思い行くことにした。

熊本城見学をささっと見学し、友人と私は熊本駅から九州横断バスに乗った。満願寺温泉入口に降り立ったが、入り口なんてものはどこにも無かった。帰りのバスまで一時間半程度、それを逃せばホテルまで行く手段がなくなってしまう。何年も日本で暮らしているとはいえ、台湾人の友人を当てにするのは酷なので私が率先して探すことにした。

スマホの地図を頼りに少し探してみたが、全く見つからず焦り始めたところ、民泊と可愛らしいおばあちゃんが見えた。この人に頼るしかないと思い万願寺温泉の場所を訪ねた。おばあちゃんはサラッと案内してあげると言ってくれた。更にコーヒーでも飲んでから行こうと家へ案内してくれた。もう神々しくすら見えた。ただ、コーヒーお喋りタイムがはじまると、お風呂に入る時間があるのか心配になってきた。焦りがピークに達したところでおばあちゃんがそろそろ行こうかと言って車を取ってきてくれた。

車で着いたその場所は想像以上に丸見えだった。元来、小心者の私はちょっと躊躇した。丁度良くなく男性が一人入浴されていた。凄く早く上がってくれないかなと思ってしまっている私の横で、おばあちゃんが洋服を脱ぎ出した。年の功とはまさにこのこと。あなた達も入りなさいーとおばあちゃんの呼ぶ声を聞きながら、横で台湾人のお友達は私はいいやとリタイアした。もうチャレンジャーは私しかいない。おばあちゃんはすでに湯船でシャンプーを始めている。躊躇する私におばあちゃんがタオル巻いて入っていいよと言ってくれたので、タオルを巻いて入浴することになった。ちょっとホッとした。

丸見えの脱衣所と川の中の湯船

私が湯船に浸かると同時ぐらいに気まずかったのか、先の入浴者も上がってしまった。申し訳ない。しかしそのお陰でリラックスして入ることができた。横に川、目の前に広がる景色は完全に住宅街。前の道路を佐川急便まで通って行く中、温泉に浸かる。なんとも不思議な感覚だ。おばあちゃんや友人とおしゃべりをしていると、ついに私が待ちわびていた野菜を洗うおばあちゃんが出現した。テレビで観て以来、数年越し待ちわびた理想の情景に出会い感慨深いものがあった。大分綺麗目のガンジス川という言葉が頭に浮かんだ。地元民でない私にとってはやはりカオスである。

理想通りの野菜を洗うおばあちゃん

温泉を楽しんだ後、おばあちゃんがバス停まで車で送ってくれた。バス停で一緒に写真をとって別れた。地元に帰った後、お礼状をしたためたところ、お返事が返って来た。またお会いしたいものである。私は熊本地震の前に訪れていたため、今満願寺温泉がどのような状況になっているのかわからないが、今度は堂々と全裸で入れるよう精神力と体型を鍛え直しておきたい。

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