ウルチロで昼食を

韓国でオススメの場所といえば、私は乙支路(ウルチロ)をあげる。明洞から程近いこの場所に何があるのかと言えば、何もない。お買い物スポットではあるのだが、購入できるような物は特にない。韓国の友人にこの場所が好きだと言ったら、秋葉原みたいだよね、と言われたが、秋葉原で見たことないものばかりだ。

例えばどんなお店があるかと言うと、ドアノブだけを売っているお店とか用途がわからないキラキラ光る粉だけが売っているお店とか。とにかくよく分からないものだらけだ。ここで何をするのかといえば写真を撮っている。日本では撮れない風合いの写真が撮れるので韓国に行くたびに訪れている。

何年前だろうか、その日も私はウルチロで写真を撮っていた。ふと横道を覗くと良い感じの通路があったので、入ってみることにした。まっすぐ歩いていくとタンクトップのおっさんが仁王立ちで腕を組んで立っていた。写真を撮りながら歩いて行くと、そのおっさんが話しかけてきた。なんと言っているかは分からないが、こっちに来て写真撮ったらと言っているようだった。おっさんに案内されるがままに建物に入ると、そこにはまたタンクトップのおっさんが数人居た。そこは工場のようだった。おっさんはもうすぐ仕事はじめるから待っててと言った。これも恐らく、、。座って待っているとコーヒーとオロナミンCのようなものを差し出された。コーヒーを受けとって飲んでいたが、一向に作業が始まらないので、片言の英語で明日か明後日来るねと言って帰った。

おじさんを見つけた通路

次の日、おみやげのカントリーマームを持ってウルチロを歩いていると先に、またもおっさんが仁王立ちで立っていた。よく来たなといった様子で工場に迎えてくれた。中にはいると他のおっさん達は仕事をしていた。金型に溶かした金属を流し込んでいる。鋳造の工場だったのかとはじめて知った。このような仕事見せてもらえる機会は少ないので沢山写真を撮らせてもらった。

写真を撮り終えたところで、仁王立ちのおっさんからランチトゥギャザー?と言われた。その日は時間があったので、ウンウンと頷いておっさんについて行った。工場の並びに二組お客さんが入ればいっぱいと言うようなお店があった。そこで韓国ドラマで食べそうな昼食をご馳走になった。ご飯を食べながら、おっさんの家族写真を見せてもらった。意外なほどにキレイな奥さんで失礼ながらびっくりしてしまった。食べ終わったところで、おっさんが韓国語で「この子よく食べるなぁ」と言った。韓国語がわからない私だが、日本語のように直脳に飛び込んできた。人生で二度目の体験だ。(もう一回は台湾でトイレから出て来た私におばあさんが放った言葉「お嬢さん!パンツ丸見えだよ!!」だ。)お店を出てお礼を言って帰った。撮った写真を届けたいなと思っていながらもう結構な年月が経過してしまった。今はどこをどう行けばあの工場にたどり着くのかも思い出せない。いまでもおっさんはウルチロの通路で仁王立ちしているのだろうか。

おっさんとトゥギャザーしたランチ
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